今回は労災保険(労働者災害補償保険)の基礎!!
労災保険は労働者の業務中、通勤途中に起こったケガや病気、障害、死亡に対して保険給付が行われる保険制度です。

業務中や通勤途中に事故や病気などで病院に行った場合は、保険証を提示しないように注意!窓口で労災保険が使えるかを確認後、速やかに会社へ連絡!!
実際の生活、FP試験にも役立ちます!(この1記事でFP2・3級の公的医療保険の範囲を大体網羅しています)
労災保険(労働者災害補償保険)
労災保険の特徴
以下は、被保険者、給付の対象者、保険料負担者などの労災保険の特徴をまとめた一覧です。
| – | 労災保険(労働者災害補償保険) |
| 保険者 | 中央‐厚生労働省 地方‐各都道府県労働局、および労働基準監督署 |
| 被保険者 | 原則として1人でも労働者を使用するすべての事業所(強制加入) ※中小事業主、個人事業主、海外派遣者等は本来、労災保険の 対象外であるが、一定の要件を満たす場合には申請により任意に 加入できる場合がある(特別加入) |
| 保険の対象者 | パート、アルバイト、日雇労働など雇用形態、労働時間の長短 問わず、すべての労働者 |
| 窓口 | 労働基準監督署(大体の場合は労災発生後、会社に連絡し会社に 申請してもらう) |
| 保険料負担 | 全額が事業主負担 |
| 保険料 | 保険料率は事業の種類により異なる |

原則、会社は働いてくれる従業員のために必ず労災保険に加入(強制加入)し、保険料も全額を事業主が負担!!
業務災害と通勤災害
労災保険は業務災害と通勤災害の2つに分けられます。
どちらも受けられる給付にほとんど違いはありませんが、労災の認定基準はそれぞれ違いがあります。
| – | 認定基準 |
| 業務災害 | 業務遂行性(労働者が使用者の支配下にある状態と認められること) 業務起因性(発生した災害が業務に起因して生じたと認められること) の両方が認められる必要がある |
| 通勤災害 | 就業に関して、以下の移動を合理的な経路及び方法により 行っている通勤途中の災害、ただし、業務の性質を有するものを除く (1)住居と就業の場所との間の往復 (2)就業の場所から他の就業の場所への移動 (3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動 上記の経路を逸脱、または移動を中断した場合は、逸脱又は中断の間及び その後の移動は「通勤」とみなされない ※ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない 事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を 除き「通勤」となる |

文章が超ムズですが、業務遂行性はその災害が職場にいて仕事をしていた(休憩時間中含む)ときに起こった、業務起因性はその災害がやっていた業務が原因で起こった、ということ!
業務災害・通勤災害となるケース
| – | 災害発生の例 |
| 業務災害に該当 | ・製品を製造中に機械に巻き込まれケガを負った(業務上の負傷) ・業務中の過度なストレスによってうつ病を発症した(業務上疾病) |
| 通勤災害に該当 | ・通勤の途中、駅の階段で転倒し足首を骨折した ・通勤途中にコンビ二で買い物をして会社に向かう途中、転倒し 足首を捻挫した ※家と会社の間の経路を逸脱、または移動を中断した場合は、逸脱 又は中断の間、その後の移動は「通勤」とみなされないが、逸脱又 は中断が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により 行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き 「通勤」と認められる |
| どちらにも 該当しない | ・自宅からの通勤途中に持病の不整脈により意識を失い病院へ搬送 された(災害の原因が持病によるもので、通勤との因果関係が認め られない) ・友人の家に宿泊し、翌日、友人宅から職場に向かう途中に転倒し 手首を捻挫した(友人宅は通勤経路の上での住居にあたらず、友人 宅からの出勤は「通勤」にあたらない) |

FP2・3級の試験では業務災害、通勤災害の詳細や、認定の具体例まで出題されることは少ないと思うけど、赤文字、黒太字の部分は覚えておいてもイイと思います!
保険給付
労災保険の主な給付内容です。
業務災害の場合は「〇〇(補償)給付」、通勤災害の場合は「〇〇給付」という。

業務災害、通勤災害、どちらも給付内容にはほとんど違いはないけど呼び方が変わるよ!
| – | 給付内容 |
| 療養(補償)給付 | 病気、ケガをした場合に労災病院や指定病院で必要な治療を受けられる 療養補償給付(業務上災害)では労働者の自己負担金はない ※療養給付(通勤災害)の場合は200円を超えない範囲で一部負担金あり |
| 休業(補償)給付 | 病気、ケガで労務不能(出勤できない)となり、賃金が支給されない場合 に休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%が支給される(通勤災害 を除き、休業3日目までは事業主が休業補償を行う) 【休業特別支給金】 休業4日目から休業1日につき、給付基礎日数の20%相当額が支給される 実質、休業4日目から給付基礎日数の80%が支給される |
| 傷病(補償)年金 | 病気、ケガが1年6ヵ月を経過しても治らない場合、一定の傷病等級(1~3級) に該当すれば、休業(補償)給付に代わって支給される |
| 障害(補償)給付 | 病気、ケガが治癒した後に障害が残り、一定の障害等級(1~7級)に該当する 場合に支給される |
| 遺族(補償)給付 | 労働者が死亡した場合に、労働者の収入によって生計を維持している遺族に 支給される(遺族(補償)年金・遺族(補償)一時金) 年金支給額は受給権者と生計を同じくする遺族(受給資格者)の数に応じて 支給 |
| 葬祭料・葬祭給付 | 労働者が死亡した場合、その遺族、もしくは葬祭を執り行った者に支給される |

健康保険の傷病手当金と併せて覚えつつ、知識の整理をしよう!
休業(補償)給付と傷病手当金
| – | 【労災保険】 休業(補償)給付 | 【健康保険】 傷病手当金 |
| 災害発生状況 | 業務中、通勤途中 | 業務中、通勤中以外 |
| 支給開始時期 | 休業4日目から支給 休業3日目までは事業主が休業補償 | 休業4日目から支給 連続した3日間の待期期間あり |
| 給付日額 | 1日につき給付基礎日額の60%が支給 + 休業特別給付金(給付基礎日数の20% 相当額) 実質、給付基礎日数の80%が支給 | 標準報酬月額を平均した額の 30分の1相当の金額の3分の2相当額 |
| 支給期間 | 期間制限はなし | 1年6ヵ月を超えない範囲での支給 |
| 治癒したor しない場合 | 病気、ケガが1年6ヵ月を経過しても 治癒せず、一定の傷病等級(1~3級) に該当 ⇒傷病(補償)年金を支給 病気、ケガが治癒した後、障害が残り、 一定の障害等級(1~7級)に該当 ⇒障害(補償)給付を支給 | 1年6ヵ月を経過しても治癒しない場合、 その時点で症状が固定(治癒)したと される ⇒障害年金の申請 |
おわりに
今回は労働者災害補償保険の基礎でした。
労災保険は給付を受ける機会があまりないと思うのでピンとこないかもしれませんが、
- 業務中、通勤中以外に病気やケガをしたら国民健康保険、健康保険から給付(治療)を受ける
- 業務中、通勤中に病気やケガをしたら労災保険から給付(治療)を受ける
みたいに、どんなシーンでその保険を使うのか、給付内容にどんな違いがあるのか、とイメージしながら学習してくと知識が整理されていくと思います。

では、おつかれさまでした!!
